海外格安ツアーで業績を拡大していた旅行会社てるみくらぶが破産したことで、9万人の旅行客に影響が及ぶかもしれないとの事です。
てるみくらぶで一体何がおきていたのでしょうか。
旅行会社の資金繰りが悪化することは少ない
旅行会社は資金繰りが悪化することは少ないとされています。
その理由は、初期投資が少なく基本的にお客さんから旅行代金を収受して、手配先の交通機関や宿泊施設へ代金を支払うビジネスだからです。
旅行会社の利益の源泉は、パックツアーに上乗せした手間賃と交通機関やホテルからの手数料が主となります。
金利の高かった時代は、お客さんから受け取った旅行代金を手配先へ支払うまでの間、資金が旅行会社の手元に残るために利息収入も大きかったと考えられます。
スーパーなど物を売るビジネスでは、自己資金または借入金で商品を買い付けてその商品をお客さんへ売ることで利益の計上を行い資金を回収します。
もし、買い付けた商品が不人気で売れずに処分するようなことになると、自己資金が底をついて、借入金は返済できずにお店の継続が難しくなります。
ただお店が倒産してもお客さんが金銭的な損失を受けることはありません。
お客さんの立場から見ると旅行前に代金を支払う必要があるために「てるみくらぶ」のように旅行会社が倒産するとお客さんは多大な金銭的損失を受けることになります。
過去の旅行会社破綻事例
てるみくらぶはこれまでの旅行業界の破綻で4番目に大きい負債額でした。
過去の破綻の上位5社は次のとおりです。
会社名、負債額、破綻した時期の順番に記載しています。
(株)ジェットツアー 252億円 1998年2月
(株)龍王 220億円 1993年10月
(株)ブルーボックス 192億円 1995年4月
(株)てるみくらぶ 151億円 2017年3月
(株)宮城野観光バス 108億円 2002年1月
1990年代前半に破綻事例が多い理由は、バブル崩壊の影響で旅行業界は苦しい時期だったこともあります。
旅行業界大手のJTBでさえも1994年3月期は営業赤字に陥ったほど大変な時期だったのです。
てるみくらぶはなぜ行き詰ったのか
てるみくらぶはインターネットでの海外格安航空券販売を得意としていました。
航空会社から空席を安く仕入れ、販売実績も良かったため航空会社から一定の信頼も得ていたようです。
しかし時代は変わり、航空会社は運用効率を高めるため過去に導入した大型航空機から小型化を進めたことと、日本へやってくる外国人観光客の増加で航空機の空席が少なくなりました。
そうすると空席を仕入れることが徐々に困難になってくる訳で、てるみくらぶの稼ぎ頭が無くなり追い打ちをかけました。
そこでてるみくらぶは、インターネットで旅行を購入しない高齢者に注目して、新聞広告で旅行商品を販売する作戦に出ました。
新聞広告を利用するメディア販売は店舗型の大手旅行会社などがすでに顧客を囲い込んでいるライバルの多い商売ですので、新参のてるみくらぶは相当苦戦したことでしょう。
メディア販売はインターネット販売に比べて広告費に対する効果測定が不明瞭です。
大手旅行会社は店舗販売からコストを抑えるために新聞広告へ移行した経緯があります。
なぜてるみくらぶはわざわざ得意とするインターネット販売からコストのかかるメディア販売に乗り出したのか理解に苦しみます。
2年ほど前から経営が悪化していたとも報道されていますので、まだ会社の体力が残っているうちに同業者からの支援を受けるなど被害を最小限にする経営判断が欲しかったところです。ここまでの騒動に発展させたてるみくらぶ社長の責任は重いです。
てるみくらぶ騒動から何を学ぶことができるのか
私は実はこの騒動でてるみくらぶを知りました。てるみくらぶを利用していた方には申し訳ないですが、私はてるみくらぶの旅行と聞いても知らないので「はあ?どんな会社なの」と申し込むことはなかったと思います。
今後、こういった事がないように注意するにも旅行会社では上場しているところは少ないので決算書で確認しようにも苦労します。
- あまりに安すぎる旅行代金は疑う
- 派手な信じられないような売り方は疑う
- 旅行代金を現金で払うように迫るところは疑う
私が思いつく対策はこれぐらいです。
旅行は非日常で楽しい思い出となるものです。旅行会社は同じようなことにならないようにしっかり経営してもらいたいですね。